2014年11月26日発売の「バドミントン外交官」より一部抜粋。
言うまでもないだろうが、ジャングルには道は無い。橋もない。そういう場所を二時間かけて進み、また二時間かけて戻るのだが、このとき案内役をしてくださったのが、ブルネイに三〇年以上在住されている澤田紘さんという方だった。
澤田さんと仁坂大使は、私が着任する前から親しくされていて、お二人は行き帰りの車中であれこれ話をされていた。私は澤田さんとはその日が初対面で、大使と澤田さんのお話の聞き役に回っていたが、ジャングルからの帰り道、澤田さんがふとこんなことをおっしゃった。
「最近、例のサイトのアクセスがずいぶん減っていましてね。そろそろ閉じようと思っているんです」
澤田さんはブルネイを紹介するためのサイトをボランティアで運営しているのだが、ここ数年はアクセス数が激減している、というのである。サイトを立て直したいのは山々だが、最近は時間的余裕がなく、更新が滞っている――ともおっしゃっていた。更新が滞ればアクセスが減るのは当然だが、澤田さんのお話を聞いているうち、そのサイトの名前が『ブルネイよいとこ南の風通信』だとわかって驚いた。ブルネイ赴任に前後して、私はそのサイトをよく見ていたし、何かと参考にさせてもらっていたのだ。
今日で私とは一旦お別れです。
最後にこっそり気づかれないようにして一枚撮った。
自分も裸で澤田さんも裸だった、これこそまさに裸の付き合いだったんだろう。
そう、今日も河の風がそよそよと吹く中で。